「俺は国が直接絡む依頼は受けないから稼ぎが少ないの」

「じゃあどういう仕事してるの」

「今みたいなデータの受け渡しとか、護衛とか、人質の救出とかかな。暗殺なんかも請け負うやつもいるよ」

 幸子は知らない世界をかいま見ているようで感心しきりだった。

 しかし青年はやや眉を寄せて彼女を見下ろすと、

「こんな話聞いてどうすんの」

「いいでしょ別に」

 ことあるごとにムッとさせるわねこの人! 顔はいいけど絶対にモテないわ。

 むしろイケメンだから余計に嫌われたりしてるんじゃないの?

 幸子は心の中で怒りの念を送った。