「なんか言った?」

「なんでもないわよ」

 腹立たしげに応える。

 隣にいる青年は小首をかしげて再び周囲の気配を探った。

 この青年と出会った時は、自分はなんて幸運なんだろうと思ったものだが、いまでは不運としか思えない。

 背中までのシルヴァブロンドの髪を一つに束ね、赤茶色の可愛い目元に整った顔立ち。

 にこりと微笑めばまるで天使のようだ。

 日本人ではないため、はっきりとした年齢は解らないがたぶん20代の終わり、二十八か二十九といったところだろう。