さらりと流れる髪が暗闇に映え、なんだかぼんやりと体が光りを放っているようにも見える。

 あまつさえそんな笑顔を向けられたら、この人は本当に天使なんじゃないだろうかと思ってしまう。

 幸子の脳内では、戦場に舞い降りた天使が激しい戦いを治めるという図が妄想されていた。

「それよりもうちょっと危機感持って欲しいんだけど」

「悪かったわね」

 怪訝な表情で見つめられてプイとそっぽを向いた。

 危機感持てって言われても、そもそもあんたから危機感なんて一ミリも感じないのにどうやって持てって言うのよ。