そうして暗くなった道に出てしばらく歩き、再び道から外れて茂みに体を隠す。

 山はすでに虫の声を響かせつつあり、目を凝らしても十メートル先の視界もあやしい。

「それで厄介な相手って?」

 幸子は先ほどの話を蒸し返した。

 ダグラスは忘れてくれてれば良かったのにと喉の奥で舌打ちをした。

「聞こえてるわよ」

 目を据わらせる幸子から視線を外しちょろりと舌を出した。

「実は──」

 そうして青年は再度、語り始める。