「誰のせいだと思って──!」

 声を荒げて応えたとき、青年がストールを差し出した。

「あ、ありがと」

「薄いけど保温性は抜群だから」

 言ってリュックのファスナーを閉じる。

 幸子は渡されたストールを肩に羽織った。

 確かにとても薄いけど、なんだか寒さが和らいでいく。

 虫の声も少しずつだが響き始める。

 暗闇になりつつある山の中でダグラスという青年の髪は輝きを失わず、本当の天使のようにそこいた。