「解った。起こすのはやめよう。」

佑桜は、次に今の状況を話す。
「後藤さんの話から、訳はさっぱり解らないが、老人は一週間以上前からここに眠って居る。何者なのかも全く解らない。
なのに、何故後藤さんはこの老人の味方をするんだ?」

後藤は、うつむいて言った。
「似ているんです…二年前から行方不明になった祖父に…」

佑桜は思い出した。2年前行方不明になった老人を捜査した時の事を。老人はかなりの放浪癖があり放浪者として、その捜査は打ち切りとなっていた。
「後藤さんの祖父は放浪癖が無かったか?」

「はい!そうなんです!何処にでもいってしまうんです!」

「俺はあなたの祖父の捜査をした事があるかもしれない…
だがその老人は、前野(まえの)と言う名前だった…」

後藤は答えた。
「私の旧名です。結婚したんです。
探してくれたんですか…有り難うございます…」

眠る老人は放浪者前野ということが浮かんできたが、それが謎を深める。