「先輩、前野老人は見付かりましたか?」

「あぁ、さっきな。」

「二年前、東蔵山で僕の姿が先輩に見えなくなった時には声も届きませんでした…」

佑桜は、東蔵山への入口で横井とあぐらをかいて座っていた。横井の隣には消えた警察犬もいた。佑桜は頭を下げていた。
「見付けてやれなくて本当にすまない。」

「仕方無いっすよ、すぐに先輩達が見えなくなってしまい、おかしな人の姿しか見えなくなってしまったんです。」

「横井、この世界から出るぞ。」

「先輩すいません、拳銃無くしてしまいました…」

「大丈夫だ、多分前野老人が拾っている。そんなことよりも早く出よう!」

「先輩をいつも尊敬しています。
自分という者をしっかり持っていて、それを曲げない人だと。」

「横井、戻ろう!」

「先輩はすごいや、もう此処から出ようとしている。」

「戻ろう!」

「気付きませんか、先輩はもうこの世界から戻り掛けてるんすよ。」

「だから、横井お前もしっかりしろ!」

佑桜は横井の姿が見えなくなり始めた。
「会えて良かったっす。先輩ありがとうっす。」

すぐに横井と犬の姿が消えてしまった。

「横井…」