「わしにも君と言う大切な人が居たのか。いつからか忘れてしまった。わしが会いに来てしまった為に巻込んでしまった。
わしは君達をどうやって元の世界へ戻すか考えた。君達には眠っていたと思わせたみたいだが。」

「おじいちゃん。私、この世界に居てあげようか?」

「気持ちだけで充分だ。もう君を呼ぶ事も無いだろう。
後の2人もできたら、元の世界へ戻すつもりだ。
わしは此処の住人達を元の世界に戻す事が、旅の目的だった。
だが此処の住人達は、自分という者を忘れきっていた。そしてわし自身も段々とな。

わしは君を思い出せた時、心温まる気持ちになった。ありがとうな。
さあ、君の名前を言ってくれ。」

後藤は、前野老人の右手を両手で握った。
「じゃあね…ありがとう。

私は、後藤 前子 おじいちゃんの孫娘です。」

そして、前野老人の前には誰も居なくなった。

「ありがとうな。」