車で風車町へ一時間程度走った所だろうか、後藤が言う。

「佐田さん、近くまでおじいちゃんが来てます。」

後藤が道を案内する。
ガウンを着たあの老人が、車も通らない大通りの真ん中を歩いていた。

佐田と後藤は車から降りて前野老人の所へ行く。

前野老人が2人を見て口を開いた。
「すまない、わしのせいでこの世界に巻込んでしまったようだ。
後の2人はどうした?」

佐田と後藤は驚いた。佑桜さんの他にも誰か居た事に。
前野老人にその事を話す。

「そうか…だが此処に居る2人は元の世界に帰してあげたいと思う。」

前野老人は佐田に問う。
「若いの、お前自身の名前が言えるか?思い出せるか?」

「僕は…僕は…」
佐田は忘れていたが、何かを吹っ切るように言った。

「僕は、佐田 正人です。」
その瞬間佐田は、前野老人と後藤の前から消えた。
前野老人は後藤に言う。