その者は、鳴り続ける電話の受話器を手にした。
「もしもし、刑事さんですか?」
(若い男の声だ)
「何?」

「老人が6日間眠ったまま起きないんです!」

「今から向かう。場所は?」

「下(しも)工場跡の一室内です。」

「解った、待ってろ。」

そう言うと受話器を戻した。(あんな所で老人が?)
直ぐに、車で下工場跡へ向かう。

工場はもう使われず、半壊した形で人や建物の少ない静かな町に残っていた。下工場跡へ着くと、若い男が近付いて来た。
「刑事さんですね?さっき通報した者です。」

「そうか。」

そう言葉にした者は、この風車(ふうぐるま)町の30代ぐらいの渋い警官だった。
警察手帳を若い男に見せると、6日間眠ったままという老人の所へ案内させた。