奈津美さんが吉田に連れ去られる前。

確かに奈津美さんは、僕にそんな事を言っていた。

今ならその理由がわかる。

「奈津美さんは…僕が労咳だという事を知っていたんですね…?」

「…………」

彼女は申し訳なさそうに俯いた。

…彼女は優しい人だ。

僕が病に倒れ、そのまま二度と剣を握る事無く死んでいくなどと、伝える事はできなかったのだろう。

その上で、そんな死に方をするくらいならこの時代に残り、労咳を治して、共に平和な時代を生きてはどうかと言ってくれたのだ。

「ありがとう、奈津美さん。貴女の心遣い、優しさ…痛み入ります」

僕は奈津美さんに向かって微笑みかける。

「でも…それはできません…僕は…僕の時代に帰ります」