吉田も、かわした瞬間に勝利を確信したに違いない。

ましてや、既に余力のない沖田さんが渾身の力を込めて放った突きなのだ。

二の太刀があるなどとは思いもよらなかっただろう。

しかし。

「!!?」

突きをかわした瞬間、吉田の握っていた刀が突然弾き飛ばされた。

更には…「!!!!」

かわした筈の沖田さんの刀の切っ先が、自らの眼前に突きつけられた!!

…そばで見ていた私達ですら、何が起こったのかわからない。

沖田さんの突きがかわされたと思った瞬間、いつの間にか形勢は逆転し、吉田が沖田さんに刀を突きつけられる形になっていたのだ。

「…成程」

唐突に。

吉田が苦笑いを浮かべる。

「三段突きか」

…それは、この時代の文献にも残されているという、沖田総司が最も得意としたとされる技。

一瞬のうちに、文字通り目にも止まらぬ速さで三度の突きを繰り出す。

一度目の突きをかわされたとしても、残る二回の突きで敵を仕留めるという、まさしく必殺の技。

沖田さんは一度目の突きをかわされた後も止まらず、二度目の突きで吉田の刀を弾き飛ばし、三度目の突きを吉田の眼前に突きつけたのである。