咳き込み、動けない僕の目の前で。

「!!」

吉田は奈津美さんの腹の辺りを殴った。

「うっ…!!」

その衝撃に耐え切れなかったのか、奈津美さんは倒れこむ。

そのぐったりとした体を、吉田が受け止めた。

「き…貴様…奈津美さんに何を…!!」

息も整わないまま、吉田を睨みつける。

「戯言だと言っただろう」

吉田は華奢な奈津美さんの体を肩に担ぎ上げた。

「決闘には応じると言ったな…この先に、古い神社がある。今夜…丑の刻にそこで待つ。決着を付けようではないか。来ねばこの娘の命はない」

「き…貴様…!!」

無関係の奈津美さんを人質にしようというのか…!!

怒りに我を忘れそうだった。

しかし、今の僕の体では、吉田から奈津美さんを奪い返す事はできない。

「時間までは、娘に手出しはしない…せいぜい遅れぬように来る事だ」

余裕の笑みすら浮かべ、吉田は僕の目の前から奈津美さんを連れ去って行った。