この時代に来て、数日が過ぎようとしていた。

「沖田さん、申し訳ありません」

へきるさんが深々と頭を下げる。

「時間跳躍機の不具合箇所の特定がまだ出来ていないんです。沖田さんが元の時代に早く帰りたいのはよくわかっているんですが…」

本当に申し訳なさそうに言う彼女は、追い詰められているかのようにさえ見えた。

きっと、ここ数日殆どまともに睡眠を取っていないのだろう。

やつれた表情をしている。

「へきるさん、どうか頭を上げてください」

僕はへきるさんに言う。

「僕は貴女だけが頼りなんです。その貴女が具合を悪くして倒れたりしたら、僕は帰る手段をなくしてしまいます…どうか十分に体を休めて…それからでも一向に構いません」

「そう言って頂けると気が楽になります」

へきるさんは苦笑いを浮かべた。

…本心からの言葉だった。

元の時代に帰る方法など、僕には思い浮かばない。

ここで頼りになるのは、本当にへきるさんだけなのだ。

僕はただひたすら、彼女が時間跳躍機とやらの不具合箇所を特定するのを待つしかない。

それに…。

僕は隣に座る奈津美さんをチラリと見る。

…少しくらい、元の時代に帰るのが遅くなっても構わないと、不謹慎な事を考えていたりもした。