翼「……ごめんな、律。すぐに助けに行けなくて」


眉を寄せて悲しそうな顔をする翼。

そんな顔しないでよ。
…ボロボロになりながら助けに来てくれたじゃない。


『………ううん。嬉しかったよ。ありがとね』


確かに恐怖のドン底だったけど、
桜花と翠嵐なら必ず助けに来てくれると心のどこかで思ってた。


翼「……無理して笑うなよ」


悲しそうな、でも優しい声。




あぁ、もう、我慢してたのに。



『…………ッ…』

微かに漏れた嗚咽。
視界がどんどんぼやけていく。



翼「…………ほら、来い」


腕を広げる翼の胸に飛び込んだ。






翼のぬくもりに安心してさらに涙が溢れる。

『……ッ…こわっか…った』


翼「……うん」


ケガを気遣うように包む翼の腕。
子どもをあやすように頭を撫で、背中を一定のリズムで叩く。


『……あたしのこと……ッ…怖くない?』


翼「…怖いわけないだろ」


紅として暴れたはずだ。
あの姿に恐れて離れて行かれても可笑しくないのに。


少し怒ったように否定してくれた翼があたしの心を溶かす。