目を開けると、白い天井。

ここ……どこ?

ふと隣を見ると、大地が寝ている。

あ………私教室で倒れたんだ………。

体を起き上がらせると、大地が起きた。

「あ、梨子。起きてたんだ」

「うん。今起きたとこ。ごめんね大地。起こしちゃって」

「いや。いいよ。それより梨子大丈夫か?」

「うん大丈夫。ありがと。あのね大地……」

「ん?」
優しい顔して微笑んでくれる大地。
この笑顔に私はいっつも元気をもらってた。

「思い出せそうなの」

「え?」

「だから、思い出せそうなの」

「梨子……。記憶が戻りそうなのか?」

「わかんない。まだ、もやもやする。霧がかかったみたいな感じだけど」

「そっか……」
それっきり大地は黙ってしまった。

私は小学校1年の時に事故にあった。
それで、その前の一部の記憶をなくしてしまったのだ。
両親の事は覚えてるけど、大地の事は覚えてなかった。

寂しそうに「梨子………」って呟く大地が忘れられない。


「もー帰るか!」

沈黙をやぶったのは大地。

「あれ授業は?」

「そんなのもぅ終わってるよ」

あぁ。たしかにもぅ夕暮れだ。
そんなに寝てたんだ私。

「あ、でも部活は?」
大地はバスケ部。私はそのマネージャーをしている。

「休んだ」

「え。試合前なのに?」
大地は1年生ながらレギュラーなのだ。

「梨子が心配で部活なんかしてられっかよ」

やっぱり大地は優しいね。
「けど……」

「大丈夫だって。先輩には言っておいたし。皆に梨子の側にいろって言われたし」

「え、いいの?」

「おぅ!だから帰ろうぜ」

やっぱり私、大地の笑顔好きだ。

「うん!」
私も精一杯の笑顔で返す。

大地は私の頭をぽんぽんってして、立ち上がった。
私も立ち上がろうとすると…

ふらっ。よろけてしまった。

けど……大地が受け止めてくれた。

「ったく。お前ほんと危ねぇんだから」
そう言ってプイッと横向いた大地の顔は心なしか赤い気がした。

ま、気のせいか。

それから大地と他愛もない会話をして帰った。