「ここだよ。教室」
教室に着いた途端、なぜかホッとした私。

「私、先に教室に入るからちょっとここで待っててね」

「わかった」

ーガラガラッ

教室に入ると一斉に皆の顔がこっち向いた。
きっと先生だと思ったんだろうな。
そのまま私は教壇の前に立つ。

「えっと、先生がなんか急な用事で、HR来れないみたいなんで、私がします」

俺そっち行かなくていいの?っていう大地の視線を軽く返して、皆の方のを向く。

「実は転校生がこのクラスに来てます」
そう言うだけで、皆がわっとなったり
嬉しいもんね。転校生。

「ちょ。静かにしてください」
そんな私の声も聞こえる事なく、皆盛り上がってる。

「おい。皆静かにしろよ。梨子困ってんだろ」
そうやって叫んで、助けてくれた大地。

大地、ありがとね。
いっつも私は大地に助けられっぱなし。
いつか恩返ししたいな。

「ねー、梨子ぉ、転校生って男ぉー?」
そうやって甘ったるい声で聞いてくるのは、男好きで有名な、小日向 沙弥。

沙弥は大地の事が好きらしい。
それで、幼馴染みの私には敵対心剥き出しだ。

私は大地に恋心なんて抱かないのにな……

「男の子だよ」
私の答えに嬉しそうにする沙弥。

大地の事が好きなんじゃないの?
中途半端な気持ちなら、好きなんて言わないでよ。

「それでは、入ってきてもらいます。戸村くんどーぞ」