たったったっ……

もう朝のチャイムが鳴っていたので、廊下には誰もいない。
私と戸村くんの足音だけが響く。

「あの……」
突然声を発した戸村くん。

「なに?」

「高嶋さんって下の名前なんていうの?」

え?下の名前?
「梨子だけど……」

「そっか………」

「改めてよろしく。梨子」
そう言って手を差しのべてくる戸村くん。

「こちらこそよろしく。戸村くん」
差しのべられた手を払うわけにもいかず、握手をする私達。

「戸村くんなんて呼ばないで」

「え?」

「俺の事、優翔って呼んで」

「え?」
なんで?戸村くん意図がわからない。

「わかった?」
そう聞いてくる戸村く……じゃなくて、優翔。

「うん」
その答えしか、私にはなかった。