あれ? なんか、まどかの顔が歪んで……

泣くつもりなんて、全然ないのに。

アンティーク調の丸テーブルに、頬を伝って落ちた涙が、薄黒い染みを作っていく。


「…ねえ、朔、朔の部屋行こ?」

「……うん」

「お母さ~ん、うちら、朔の部屋でケーキ食べるね~」


わたしの肩に手を添えながら、叫んだまどかの声の後ろからは、先輩のお母さんのこんな言葉が聞こえていた。


――最近ね、悠生に彼女できたみたいなのよ~。わたしが仕事から帰ると靴がね……


こんなBGMなんて、ちっとも望んでないのに。


ケーキと紅茶を載せたトレーがかたかたと揺れた。


こんなの、全然、望んでないのに――…。