水のない水槽

「お母さん、こっちやっちゃうから、朔乃は天ぷら揚げてくれる?」

「わかったぁ~」


お父さんが単身赴任してからというもの、こうやって料理を手伝うことが多くなった。

お姉ちゃんは嫌がるけど、お母さんと並んでキッチンに立つのは意外と嫌いじゃなくて。

まあ、ぶっちゃけ、それ以外にお姉ちゃんに勝てるとこなんてないもんなぁ……。

将来はこんな風に好きな人のために専業主婦もいいかな、なんて思ってた時に、先輩の顔がふっと浮かんだ。


――…先輩……、迷惑だったよね…。


「ほらっ! 考え事しながら火を使わない!!」


…アブナッ!!

油の中で黒焦げの大葉がチリチリと音を立てていた。