私の通っている学校には、とびきり目立つ王子様が一人いた。


色素の薄い茶髪に、翡翠のような色の瞳。

フランス人のクォーターの影響なのか、少し不思議で端正な顔立ちの男の子。

家柄も、名前を聞けばよく知られた複合企業の御曹司。


まさに王子様というのに相応しいと、みんなは口ぐちに漏らしていた。



でも……本当に、王子様?




「きゃー!五十嵐様が手を振ってくれたぁ!!」


「私は眼が合っちゃった!!」



休み時間、どこの教室も勉強の緊張感が吹っ切れたと同時に黄色い悲鳴に包まれる。

原因は王子様のクラスが体育だったからだそうで……



「文武両道、運動神経も勉強も完璧って……どこの貴公子よ!」


「た、貴子ちゃん……」



私の隣の席の貴子ちゃんが、机をドンドン叩きながらそう嘆く。



「こーんな冬の気候の中で、白い吐息を吐きながら運動。女子のピンポイント掴んでるなぁ…」



窓ガラスは冬のせいで曇ったまま…とはいかず、女子生徒達の必死の作業によって冬でも窓の外が見えるほど綺麗だ。


その中でも、窓際の私の所だけはいつも曇ったまま。


だって…特にそういう恋愛感とかはないし、あまり綺麗でも…なぁ…。