あれから彼は来なくなった。
考えてるのか、諦めたのか。
諦めたの方が嬉しいんだけどね。
けど、
「譜雪ちゃーん!」
「きゃーっ久しぶりの冬樹様よ」
「本当だわ〜」
あーもう、忘れかけてたのに!
「何ですか。考えでも浮かんだんですか?」
「そうだけど?てかそれしかないじゃん。それとも何?俺が譜雪に会いたいから来たと思った?」
「なっ!?」
んなわけないじゃん。
本当に嫌になるわ。
初めての出会った時はかっこいいな〜なんて思っていたのに。
けど、だんだん本性が見えてきて、ウザーとか、嫌とか、そんな事ばっかり考えてしまう。
ま、それでいいんだけどね。
「で、考えって何?」
「あ、そうそう。ちょっときて」
もう、めんどくさい。
「教えて、あんたの考え」
「考えなんかないんだ。それに俺、賢くもないし、性格もSなんかじゃないんだ。俺も、昔はお前みたいな地味な奴だったんだ。」
そうだったんだ…。
その言葉を聞いて私からはだんだん〝冬樹が嫌い〟という言葉が消えていった。
別に、好きになったとかそんなんじゃないよ?
ただ、出会った時違うと思った人が今は私と同類だと言っている。
ただそれが嬉しかった。
もしかしたら私もこんなに変われるのかな?なんて思ったりして…。
(笑)(笑)(笑)
アホだ私……。
「でもなんでこんな話を?」
「だって譜雪見てるとなんだかこの事話した方がいいかなって」
そんな事考えてたんだ。
でも、今は違うもんね。
彼はこんなかっこいい人に変わったんだから。
「それだけならもういい?私、次移動教室だから」
「おうっ。じゃあな」
あっ、
「話、聞かせてくれてありがとう」
あれ?
帰るの速くね?
まっいいか。
この日から私の心に変化が現れた。