キラキラと輝く星のようなイルミネーション。
手を繋ぎ、楽しそうに通り過ぎて行くカップル達。
街に流れるクリスマスの音楽。
今、街はクリスマス一色。
赤や青や白の街並みにピンク色のオーラを出す恋人達。
そんな素敵な街に一人、黒の暗いオーラを出す少女がいる。
それが私。
地味で冴えない私の名前は合野 譜雪。
今日、私がこうやってこの街に足を運んだのは写真を撮るためだ。
綺麗なイルミネーション。
恋人達の幸せそうな雰囲気。
私が経験することのない事がいっぱい詰まったこの街で、皆の幸せを身近に感じるために写真に収めたかったのだ。
自分には来ない幸せ。
ほら、あの人もこの人も。
皆私が味わえない幸せを味わっている。
それを見ているだけでも幸せになれる気がする。
あの人も絶対幸せだな〜なんて見ていると、隣を歩く男の子が目に入った。
どうやら幸せそうな隣の人とは関係なさそうで、なんかダルそうな表情をしている。
でもその姿がとてもかっこ良くて…。
幸せそうな感じじゃないけど、私と同類という感じでもない。
でもあまりにもかっこいいからついついレンズが彼を追ってしまう。
艶のある黒髪。
紅い薄い唇。
真っ白なスベスベの肌。
スラリとした長い手足。
真っ黒な大きい瞳。
少し赤く染まった頬。
まるで白雪姫みたい。
って、私なに言ってんの?
彼は男じゃん!
だとすると、白雪王子?
うんあり得る。
カラスのような黒髪に雪のような白い肌。
彼はきっと童話から出て来た新しいキャラクターだ。
声かけてみよう。
いや待てよ。
ここで声をかけたら私なんかただのストーカー。
だからここは自然に通り過ぎよう。
私はシャッターを押して彼の写真を撮ると、彼と同じ方向に歩き出した。
速くしないと彼が行っちゃう。
私は焦りすぎて早歩きになってしまった。
目標が分からなくなってきた。
急がなきゃ。
「きゃっ!」
ドスッ。
私が悲鳴を上げるのと、ぶつかったのはほぼ同時だった。
「いてっ」
いててて。
「ごめんなさい」
お尻をさすりながら顔を上げると、
「ごめん。大丈夫?」
ぶつかったのはなんと!
私が追いかけていた白雪王子!?
「だ、大丈夫ですっ」
会えたものの、緊張する。
「じゃあ私はこれで」
はあ、緊張した〜。
これが私と彼の最初の出会いだった。