フォー、ホルモン焼き、トムヤンクン、ナシゴレン。

行ったことのない異国の料理。
全て、達也が私に教えてくれた。


食に関してもあまり冒険しようとしない私には、食べたことのないものばかりだった。


ーー俺も海外なんて、ハワイにしか行ったことがないよ。


そんなことを言いながら。

ハワイには、誰と行ったのか。それはわかり切ったことだ。


ーー海外旅行経験があるだけいいじゃない。私なんて1度もないわ。


私は気にしない風を装いながらも、少し嫌な気分になった。






「え?水村さん映画なんか観るんですか?一人で観るんですか?」


まただ。
羅夢の不躾な言い方に少し腹が立った。

けれど、もう慣れていたから、平静を装った。


「う~ん。だいたい友達と、かな。
1人で観に行くと、私、寝てしまうの」


私が声を立てて笑うのに、羅夢はトングを使い、無表情のままシーザーサラダを自分の分だけ取り分ける。

わざと無視するみたいに。


彼女と時間を共にするうち、ところどころに私を見下す態度が垣間見え、否が応でも不愉快な気持ちになった。