さっき、抜け出したばかりの白いシーツの上に身体を横たえ、目を閉じる。




瞼の裏に浮かぶ……



切れ長の一重瞼の黒い瞳。



それは、少し淋しげに見える。



似ていた。

私は気付いてしまった。



…「けいこ」と羅夢の眼差しが似ていることに。



あの日から私を苦しめるのは、けいこの面影ではなくなった。



スパの浴場で私が目にした羅夢の若い裸体ーーー白いシルクのように滑らかな皮膚。


小振りの乳房。

その上にある砂糖菓子のような桃色の乳首。


引き締まった小さな尻。



それは、私が36年生きてきた中で見たことがないくらいの極上の躰だった。



一瞬、私の目は釘付けになってしまい、慌てて、目を背けたのだった。


女性同士とはいえ、風呂で人の身体をジロジロ見るのは、マナー違反だ。


だけれど、羅夢の裸体に見とれたのは私だけではなかった。


湯船に浸かっていた中高年の女性グループが、小声でヒソヒソと言い合い、
『若いわねぇ』と露骨に感嘆の溜息を吐いていた。