彼が何気無く私に触れるたびに、彼も私に好意を持っているかもしれないと、淡い期待を抱いた。
恋をするのは初めてじゃなかった。
中学生の時、同級生2人を別々の時期に好きになった。
2人とも、学年でも目立つ人気者の男子。
友達にからかわれそうで、恥ずかしかったから、誰にも言わなかった。
相手にされるわけがないと、鼻から諦めていた。
内に秘めた片恋。それが本当に恋と呼べるものなのか、よくわからない。
貴彦に抱いた思いは、それらとは違う。
確かに「恋愛感情」だった。
初めてキスを経験するなら、貴彦がいい、と思った。
私は、寝る前に貴彦を想い、鏡に向かってキスの練習をしたーーー
すぐそばの布団であどけない寝息を立てている妹の横で。
貴彦と達也には、何の共通点もない。
それなのに、時々、なぜか達也を見ていると貴彦を思い出す。
……いや。
やはり、共通するところはある。

