周りは楽しげに笑いさざめく女性客で
溢れているのに。

皆、仕事から解きはなれた開放感を存分に楽しんでいるのに。


(可愛げのない子……)


私は胸の内で呟く。
それでも、席を立とうとしたかったのは、このスパが素晴らしく快適で、食事も美味しかったからだ。


私は、冷えた烏龍茶を一口飲み、テレビ画面に視線を移す。


七三分けの珍妙な髪型のグレーのスーツを着た若い男が、難しい読み方の地名を見事に言い当てた。

スタジオ内がどっと歓声で湧いた時ーーー



「……私ぃ、こないだ、唐沢課長に抱いてもらったんです。

入社してからぁ、ずっと課長が好きだったんですぅ。
水村さん!どう思いますか?」