「雨芽ちゃん、お兄さん居たの?」
「雨芽、言ってなかったのか。
もう2人、兄弟がいるんですよ。
一番上の兄と弟が。」
最早、この話に私が答える事はなく、男が答えていた。
さっき兄弟は居ないって話したばっかりだから、男から聞く話に琴里さんも戸惑っていた。
「僕は次男の巽 晴哉(タツミ セイヤ)です。」
「水野 琴里です。」
2人はお互いに自己紹介した。
私の兄として名乗ったこの男…晴哉さんは確かに腹違いの兄ではある。
でも、1度としてそう呼ぶのは許された事がなかったから、正直この不穏な状況に倒れてしまいたかった。
「ちょっと雨芽と話す時間戴いて良いですか?」
「はい、どうぞ。」
「じゃあお借りします。」
「えっ、あの…」
戸惑っていると勝手に話は進んでて、琴里さんの返事を聞くと晴哉さんは私の腕をつかんで外に連れ出した。

