どんどんマイナス思考に陥っていると、突然玄関のドアが開いた。

航平だ‼


彼は私を見つけると、慌てたように『お前何してんだよ??』って聞いてきたから、正直に靴履いてない事を伝えた。

私が疲れて帰ってきた航平にさらに仕事を増やしたから悪いのに、航平は謝ってくれた。
私を立ち上がらせてくれて、頭を撫でると直ぐに家に入れてくれた。


初めて頭を撫でられた。
航平は何の気なしにやっただけなんだろうけど。

胸を掴まれたような気がした。


航平は気づいてないみたいだったけど、履いてる靴もペアが揃ってなかった。
航平の優しさを感じた。

普段はぶっきらぼうだけど。



だけど、私は彼に対して生まれつつある、この気持ちの名前を知らない。

だから、私はなかった事にした。