「くくっ。冗談ですよ」
「え」
「いや、本当のことですけど」
「……どっちですか……」
とりとめのない惣介さんの言葉に呆れた表情を浮かべてしまう。
惣介さんこそこうやって私を振り回してたち悪いよ……。
「……仕方ないので今のところは許してあげます。琴音さんの新しい表情も見れましたし」
「え?新しい表情?何ですか?それ」
「ヒミツです」
「えぇっ」
「よし、無事に仲直りもしましたし、外に行きましょう!今日もいい天気ですよ!」
「ちょっ……」
ガチャっとドアを開けて、惣介さんは外に出ていってしまう。
車の中に一人取り残された私はポカンとしてしまった。
……いやいやいや、惣介さんの中だけで完結してませんか!?
私、何もわからないままなんですけどっ?
結局、私は一体何をして惣介さんを振り回したというのだろう?
外で背伸びをしている惣介さんを呆然と見ていると、それに気付いた惣介さんがひょこっと屈んで、窓から車の中に顔を覗かせて、早くおいで、と言うように手をぱたぱたと上下に振ってくる。
その表情はすごく楽しそうだし、何かはしゃいでる?
……何か、かわいい。けど。
「……もうっ、どっちが振り回してるんだか」
私はそう独り言を言いながら、かちゃっとシートベルトをようやく外す。
ぽつりと溢した私の呟きの答えは1つしかあるわけはなく。
惣介さんは私に振り回された、なんて言ってくるけど、完全に私が惣介さんに振り回されてる。
それはちょっとだけ悔しい気もしつつ。
……振り回されるのは、楽しい。
そう思った。

