「……惣介さんにも“私を振り回す名人”の称号を差し上げます」
「あれ、俺、琴音さんを振り回しましたか?」
「……かなり」
「それは気を付けないと絶交されそうですね。くくっ」
無意識なの?それ、たち悪いよ……。
お見合いの日からそうだったけど、最近はさらに惣介さんは私を舞い上がらせるような言葉をすぐに言ってくる。
……でも、嫌と思わない私がいて。
振り回されるの、どちらかと言えば嬉しい……と思う。
これ、どういうことなのかな。
私は小さく息をついて、口を開く。
「……さっきの名人ですけど、“考え込み名人”で大丈夫です」
「あ、そうなんですね。了解です」
「で、考え込んだ結果なんですけど」
「はい」
「……惣介さんのお言葉に甘えさせていただいてもいいですか?」
「!もちろんです!今度パンフレット持ってきますね!」
惣介さんは左折しながら、嬉しそうに声を上げる。
左折する惣介さんは私を見ているわけじゃないのに、顔を向けられたような錯覚を感じてしまって、どきっとした。
ドキッ、を振り払うように、私は口を開く。

