「……そんなに見られると、すごく緊張します……」
「え?あっすみません!つい」
「いえ。いいんですけど……もう少しお手柔らかに、穴が開かない程度にしてもらえると、大変助かります」
「!ふふっ、そうします」
私の返事に満足したように笑うと、赤信号で車を止めた。
ふと気になっていたことを聞く。
「……惣介さんって……香水とかつけてるんですか?」
「え?いえ、つけてないですけど」
「何か……いい匂いします。あ、くさいとかじゃなくて!こう……優しく包んでくれるような」
「……そうですか?うーん……あ、わかりました。これたぶん柔軟剤ですね」
「じゅ、柔軟剤?」
「はい、柔軟剤です」
当然でしょう?と言うかのように頷く惣介さんに、私は「女子力が高い人がいる……!」と思ってしまう。
私でさえ、そこまでしてないのに。
「あれ、言ってませんでしたっけ?俺、洗剤とか売ってるメーカーで働いてるんですよ。だから、社員割引で安く買えるんです」
「え?そうなんですか?」
「だから、何か変にこだわり持っちゃってるんですよね。自社製品が一番だ!とまでは行かなくても、何となくコレっていうのがあって」
「へぇ~そうなんですね」
はい、と返事をしながら、惣介さんは車を運転し始める。

