捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。

 

これ、一番最初に会った時の香りと同じだ……!

ハンカチを拾ってもらった時のことを思い出して、どきりとした。

あれが惣介さんとの出逢いだったんだよな……すごく前のような気がする。


「はい、どうぞ」

「あ、すみません!」

「いえいえ」


私は惣介さんが助手席から離れたのを確認して、シートベルトの止め具をかちゃりとはめる。

同じように惣介さんがシートベルトをはめる音が聞こえた。


「じゃあ、出発しましょうか」

「あ、はい。すみません……何か手間取らせちゃいましたよね」

「え?そうですか?そんなことないですよ」


少し首を傾げた後、惣介さんはエンジンをかけ、車を発進させる。

私の右側で動く惣介さんの手を見て気付く。


「え、ミッション……ですか!?」

「え?そうですけど……どうかしました?」

「いや、すごいです!私絶対できないと思って、オートマで免許取ったんですよ!ミッションで運転できる人って尊敬しちゃいます!」

「楽しいんですよ。ミッション車運転するのって。ギアの切換とか手間はありますけどね。むしろ、それがいい」

「へぇ~すごいっ」


私は興味を持ってしまって、外の景色を見ずに、惣介さんの運転する姿ばかりを見てしまう。

ハンドルを切る姿とか、確認する目の動きとか、何かカッコよく見える。