「くくっ、その顔が見たかったんですよねー」
「!あっ、からかったんですかっ?」
「いえいえ?そんなことないですよ?本心ですって。だから絶交はやめてくださいね?」
「う……っ、本当に惣介さんってずるいですよね……」
「そんなことないですよ。まったくもって」
くすくすと笑いながら惣介さんがシートベルトを締めているのを見て、私もシートベルトしないと!と慌てる。
大丈夫。免許取ったんだから、シートベルトくらいできるし!
私はシートベルトをぐいーっと引いて、留め金を止める……はずだったけど。
……あれ、あれ?ど、どこだ?
止め具が見つからなくて、私はもそもそとシートを見る。
「……大丈夫です?」
「あ、はいっ」
「あ、すみません。クッションの下に隠れちゃってますね。少しドア側に移動してもらえますか?」
「え、は、はい」
「ちょっと失礼しますね」
かちゃりと自分のシートベルトを外した惣介さんが助手席に手をついて、クッションをぴらりとめくってシートと背もたれの間に入り込んでしまっていたシートベルトの止め具を取り出す。
その瞬間、私の心臓がどきっと今までで一番大きく跳ねた。
……惣介さんからふわりといい香りがしたから。

