「本当にボーッとしてるんだから。来年30でしょ?もういい歳なんだし、今日のことはちゃんと前向きに考えなさいね?」

「……うん。わかってるよ。ていうか、相手の人がいいって思ってくれるなら、私はそのまま話を進めてもいいと思ってるから」

「……そう?ならいいんだけど」


隣に座る叔母が私を見て、少し呆れたように息をつく。

私と叔母はホテルの11階にあるレストランの一席に座っていた。

周りのテーブルには何組かの人たちもいて、それぞれで歓談をしているけど、周りに迷惑にならないように小声で話す。

テーブルには邪魔にならない程度の小振りな花瓶に飾られた赤やオレンジの花があり、いかにもホテルという豪華さを感じさせる。


「それにしても、琴音ってば本当に写真見なくて良かったの?」

「あ、うん……。何となくね、見ちゃったら先入観持ったり、余計なこと考えちゃいそうだと思ったから。それに、叔母さんの見立てなら私はどんな人でも自分からは断るつもりもないから、あまり必要ないし」

「そう?まぁ、琴音がそこまで言うなら」

「うん……」


私は目線を叔母からテーブルの向こうに移す。

私と叔母の向かいの席にはまだ誰も座っていない。

そこに座る人物はどんな人なのだろうかと考えると、私の心臓がドクンドクンと重く鳴り始める。