「惣介さんってどこに住んでるんですか?」
「あ、言ってませんでしたか?実は」
「え?」
すっと伸ばされた惣介さんの指先を追うと、一つの大きなマンションがあった。
「そこなんです。まさか琴音さんのお気に入りの場所がこの公園だとは思いもしなかったので、あまりの近さに少し驚きましたけど」
「そ、そうなんですか!?」
「はい。もしかしたら、以前にすれ違っていたりするのかもしれませんね」
「!そ、そうですね」
惣介さんが住むというマンションはヨーロッパを想像させるようなオシャレな建物で。
ここに来るたびに、いつも素敵だな、いつかこんな場所に住んでみたいな、と思って見ていたんだ。
まさか惣介さんがそこに住んでいるなんて、予想できるわけがない。
「あ、でも、だったら、今日はただちょっと外に出ただけになりますよね……すみません」
「いえ。いいんですよ。琴音さんのお気に入りの場所を知ることができましたから。俺は琴音さんのことを知るのが楽しいんです。もっとたくさん、琴音さんのこと教えてください。それに、きっとこれからはこの公園を見るたびに琴音さんのことを思い出すんでしょうね?それも楽しみです」
「……」
もう、何も言えない。
惣介さんがわざとそんなことを言っているのか、心から言っているのかなんて、私には知るよしもないけど、私の心を揺さぶるには十分すぎるほどの言葉たちだ。
……惣介さんにハマっていきそうな自分がいる。
これはどんな感情なんだろうか?

