もしかしたら、私と三浦さんは捨ててしまおうとしているものと、求めているものが同じなのかもしれない。
捨ててしまうのは“恋愛”、求めるものは“それなりに幸せな家族”。
「……やっぱり引きました、よね?」
苦笑いを浮かべて三浦さんは私に視線を戻す。
私はゆっくりと横に首を振った。
「……いいえ……私も、ですから」
「え?」
「女って29歳にもなれば、周りは既婚者ばかりなんですよね。25歳辺りから友達も周りの同年代の子も、どんどん結婚していって。ここ数年、正直焦っていたんです。私は完全に乗り遅れているんだって。でも、自分で恋を見つけに行くのは億劫だし骨も折れるだろうし、うまくいくとも思えないし……それなら、もうこのまま一人でいいのかもしれないって思ってました。そこに舞い込んできたのが、この話でした。ごく普通の、それなりに幸せな家族を手に入れることができるのかもしれないと。……やっぱり私も後ろ向きな理由なんです。……ごめんなさい」
「ふ。何で謝るんですか?同じなんだから、俺たちは対等でしょう?」
「!」
「良かったです。何か安心しました」
「……安心、ですか?」
「はい。横山さんの話を聞いて、やっぱり、俺はあなたとの未来を考えていきたいと強く思いました」
「えっ?な、何で……」
「捨てるものも、求めるものも、同じだからです」
「!」
ついさっき思っていた台詞が三浦さんから出てきて、私はかなり驚いた。
それと同時に湧き上がる感情。
似たもの同士であれば、上手くいくかもしれない。
それに……ただの直感だけど、私もこの人のそばにいれば安心できる気がする。
“一緒にいて安心できる”のって、精神的にも絶対に大きい。

