「あ、あの……っ」

「……」

「……っ」

「……そんなかわいい顔、しないでください。理性保てなくなるじゃないですか……」

「えっ?」


ハァと息をついて、惣介さんは私から離れる。


「……冗談ですから。少なくとも、こんな人目のあるところでは絶対にしません。……そんなもったいないこと」

「……もったいない……?とは」

「嫌ですよ。琴音さんがキスしてる表情を他の人間に見せるなんて。それを見れるのは、俺だけの特権です。誰にも見せません。絶っっ対に!」

「!!!……で、でも、惣介さんだって見れなくないですか?だって、キスする相手は……って、何言ってるんでしょうね、私!」


人様の濃厚なキスシーンを見たからか、どうも思考がおかしくなっていて、出てくる言葉が恥ずかしいものばかりだ。

きっと、惣介さんも同じ状況だから、変なこと言うんだ!

ひぃぃと心の中で叫びながら、火照りまくっている顔に手を当てる。


「……ちょっと、良くないですね。この会話」

「えっ?あ、ご、ごめんなさい!」


そもそもの原因が私が人様のキスシーンをじっくりと見てしまっていたことにあるのは間違いない。

惣介さんは呆れて怒っちゃったのかもしれない。

早速ケンカするなんて嫌!と、私は慌てて頭をぺこっと下げて謝った。


「え?あ、いえいえ、琴音さんが悪いとかじゃなくて……いや、悪いんですけど」

「!どっちですか……もう」

「…………とりあえず……頭冷やしましょう。それがいいです」

「そうですね。賛成です……」


目を合わせた私たちは少し気まずい感じがしながらも、くすくすと笑い合った。

でも、その気まずさはすごく心地良かった。