「ふむ、そうじゃな。・・・・すまんが、その人形はおいくらかね?」
「あの・・・・売り物では・・・・」
「売ってはくれんのかね?」
「は、はい・・・・申し訳ございません。・・・・ですが、もっと高性能な機械人形でしたら、お売りできます!」
残念そうに話して、別の物を売る。
それが、商売の基本・・・・らしい。
「ふむ・・・・どうするかの?メルィラ」
「ヤダね。絶対、あれ。アレじゃないとヤだ」
お孫さん・・・・メルィラって言うんだ・・・・。
「ごめんね、坊ちゃん。あれは売り物じゃないんだよ」
困ったように言う。
「・・・・お爺ちゃん」
キッとメルィラさんが睨む。
「わかったわかった。商人さんや」
まるでそれを合図にヤムアさんはがらりと変わった。雰囲気が。
「はい?」
ニコニコと営業スマイルを繰り出しているが、内心は怯えているだろう。
「商人さんとは長~い長~いお付き合いじゃった。その機械人形を売ってくれないのでは仕方ない。ワシらはもう二度と、商人さんには会えない気がするのぅ・・・・なんとも、悲しき事じゃ・・・・メルィラ、行こうか」
「お、お待ち下さいませ!ヤムア様!」
帰ろうとするヤムアさんをマスターは急いで引き止める。
「なにかね?」
「お、お売りします!ヤムア様の言い値でお売りします!ですから、どうか!」
マスターはあっさりと私を売った。
「は、箱詰めいたしましょうか?」
「いや、結構。契約を打ち切ってくれればそれでいい」
「お、お買い上げ有り難う御座いましたッ!」
こうして、私は、商人さんから、解放された。


