黒崎君の恋事情


 すると、背後から声がした。よく通る、サックスのような綺麗な声だ。


 この声は紛れもなく――

「黒崎君……」

 
 現れたのは少し長めの黒髪がよく似合う黒崎君だった。いつものように、いかにも面倒くさい、というしかめっ面を浮かべている。それでも、整って様になるのが、黒崎くんだ。


「何?」


「いや、あの……」


 頭が真っ白になる。頭のいい黒崎君に恥ずかしくないように、と考えてきたセリフも頭から消えていく。ああ、もう、ああ……。


「早くしてくれないかな?」

「あ、あの……」

「何?」

「好きですっ!」

「は?」

「えっ?」

「……」