黒崎君の恋事情


 それは、去年の真冬のことだった。ちなみに12月16日。特別風が冷たかったのを覚えている。みんな寒さでほっぺを真っ赤にしていた。


 そんな寒い放課後、私は周りとは違った意味でほっぺを真っ赤にして昇降口のあたりに待っていた。


 
「美那ばいばーい」
「誰待ってるの? 風邪ひくなよー」



 こんな寒い時は早く帰りたいと誰もが思うだろうに、私はひとり風にさらされてつったているんだから、周りから見たらおかしなもんだろう。


 
 それを見兼ねた友達の気遣いと挨拶は、どきどきと高鳴る心臓を少し落ち着けてくれた。うう、ありがとう。私はふーっと緊張をほぐすために息を吐いて、マフラーを口元へ押し上げた。


 まだかな、まだかな。

 
 私は少し体を揺らしながら、ある人物を待っていた。所謂、告白ってヤツだ。それも人生初の。玉砕覚悟だ。ただ思いを伝えたい、という純粋な気持ちだから、振られてもダメージはあまり受けずに済むはず。



 だんだんと、昇降口から校門へ流れてく人も少なくなってきた。みんな早足で、マフラーや手袋で暖をとりながら帰っていく。彼ももう帰っちゃったんじゃないかとも少し不安になったけれど、それでも待つ。