【彩夏side】






ある日の朝だった。



ピピピピピピッ



そう高い機械音が三回ほど続けて

鳴った。



陸に顔が赤いからと無理矢理押し付けられた

体温計だ。



「ん、38.4℃。

完璧に風邪だな」


「大丈夫だし!」


足元が定まらないままフラフラと歩き、

陸に近寄った。


「よくその状態で言えたな。」


「うっ」


精一杯平然を装ったつもりだったが

やはりバレていた。



「俺、今日仕事だけど一人で大丈夫か?」


その陸の言葉に私は

驚いた表情を浮かべた。


「えええ!?

陸ってフリーターじゃなかったの!?」



陸は常に私と居てくれたから仕事してるなんて

それこそ初耳だった。


「失礼だな!

仕事ぐらいしてるっ」


「いてっ」


陸はムッとした顔を作り、私に軽く

デコピンをした。


「陸は心配性なんだよ、

一人でも平気。」


「そうだな、

じゃあ行ってくるよ」



私は咳き込みながら玄関で陸を送り出した後、

ベットへ向かった。