「ああ!わっ私!

やること思い出したのでお二人でゆっくり!

どうぞっ」


「お…おう、」


彩夏はわざとらしい口調で居間の方へ

足早に駆けていった。


「陸兄、あの子が今一緒に住んでるって言ってた子?」

「ああ、そうだ。」




6年間菜摘に会わないうちに変わったな…。


吸い込まれるような黒目の多く、下に下がった目。


静かで透き通る声。



俺のよく知っている菜摘とは少し変わってしまったけど、

“陸兄”と呼ぶのは変わっていない。



そう思うと自然と頬が緩んでいった。


「陸兄、言っとくけど菜摘は

あの子と住むこと許してないから。」



やっぱりそう簡単には

彩夏の事は認めてくれそうにない様子だった。




「で、いつ帰るんだ?」


「明日帰るよ。



お墓参りしてからね」



「……そうか」









「何この匂い…?」


菜摘は急に鼻を突いた匂いに発言した。



居間から香ってきた匂いはとても心地よいとは

言い難い何かが焦げた匂いだ。




「彩夏だ……」



俺は深いため息を溢した。


こんな匂いを作り出すのは彩夏に決まっている。