行為の後の夏樹は意地が悪い
「もう、8時になるから帰るね」
「え?何もう帰るの」
「だって8時になるし」
門限があるって訳じゃないけどそろそろいい時間だ
「ふーん…。帰っちゃうんだ。じゃあ、これから朱音呼ぼうかな」
「……呼べばいいじゃん」
朱音とは、夏樹の彼女
その名前を夏樹が呼ぶたびに胸が苦しくなる
「いいんだ。じゃあ、帰って」
「……うん」
私は彼女でも無いから呼ばないで、なんて贅沢なことは言えない
言ってはいけないのだ
でも、この空間に夏樹の好きな人が入ると思うと泣きたくなる
それは、私がどうしようもなく夏樹に惹かれているからだろう
「嘘だよ。もう夜だしさすがに呼ばない」
ホッ
その言葉に少し、いやかなり安心した
本当馬鹿だな、私って
