人魚姫の罪

「俺、ジュース買ってくるわ。」
そう春が言い出して、走っていった。

もう夕方。
長い水平線の上に揺れ動く太陽が頭を出して光っている。

水平線上はオレンジと黄色に染まっていた。
磯の匂いに母さんの匂いが混ざっているようで目頭が熱くなった。

海を眺めているうちに岩場に目をやった。
そうだ。
俺が足を滑らせ落ちた場所だ。
いつの間にかこの海岸に倒れていた。
誰が助けてくれたのかさえ知らず
ましてや、俺が溺れた時、周りにだれもいなかったのだ。

溺れたのは昼間。
海岸で目をさましたのはちょうど今みたいな夕日が輝く頃だった。

不意に俺の足は、岩場のほうへ向いていた。