人魚姫の罪

合コンとお、カシス！ソーダ割ね！」
「カシスのソーダ割はないのですが…」
黒縁めがねにマスクをし、黒い三角巾にエプロンに身をつつんだ地味な店員が弱々しく答えた。
「はぁ？ねーのかよ」
口の悪い女だな、と、どん引きしてしまった。
「すみません…」
「じゃあオレンジ！ソーダ割しなくていーから！」
「か…かしこまりました」
ぺこりと頭を下げて、じみな店員はさっさと逃げた。
酔ったような酔ってないような顔をしたクルクル頭がふぅ、とため息をついた。「あんなに強くいわなくていーんじゃねーか？」
優
はなしたくなかったけど、次あの店員がここに来る時はおびえてくるだろう。
「いーのよ、あんなブス、ブスだから顔かくしてますよ丸出しな奴。うざいったらもう！」
クルクル頭を右手でかく。
またくっさい香水がただよう。
腹黒女ってこいつのことをいうのだと思った。店は週末のせいかうるさく、誰も俺とクルクル頭の会話はきこえない。
「あんた、かわいーの？」
不意に口走ってしまった。
「はあ？優君、しつれぇだね。」
「しつれぇだぁ？お前じゃね？」
「はぁ！？」
と、その時、お待たせしました～と、さっきの店員の声がした。
不思議な甘い香りがした。
と、店員がオレンジの酒をテーブルにおこうとした時だった。
ガシャンと、オレンジの酒が店員の胸元にかかった。
止まる時。
戸惑う店員。
クルクル頭がオレンジの酒を店員に投げたのだ。
その音で、店は静まり帰った。