人魚姫の罪

「えーと、俺は長田晋也でーっす!」
のりのりの自己紹介で合コンは始まった。
場所は、駅前のチェーン店の居酒屋だった。

晋也の自己紹介なのに女たちは俺をちらちら見ていた。

「松方…優です。」
「へぇ~、優さんてゆうんですかぁっ」

茶髪のクルクル頭が食いついてきた。
臭い香水が鼻にかかる。
「はい。」
「将来とかぁ、なんかになるんですかぁ?」
「父が漁師だったので、漁師に成りたい
です。」
「漁師さぁん?かっこい~っ」
てかてかの分厚い唇で、俺に話しかける。
赤いワンピースに黒と金のバッグを持つ彼女は、海岸で会ったあの人とは正反対だった。

「優、人気だな。あの子、あいつらねらってたんだよ。」
トイレで晋也が小便しながらぼやいた。
「はぁ?あんなんのどこがいいんだよ。」
「美人じゃん?」
「香水臭い女、嫌い。」
「女には毒舌ねえ」
やれやれとへんなアクションをする晋也。
あの海岸で会った人を見てしまってから
そこらにいる女性はあまり品があるように見えなかった。