そんな幸せな毎日が過ぎていった。ボクは大学とバイトの繰り返し。ハナさんは風俗を辞め、クラブに勤めていた。確かにボクが養えるわけでもないし、決定的にボク達は恋人でもなければ夫婦でもない。ただの同居人なのだ。家賃や生活費は折半だった。時々ハナさんが高級料理店に連れて行ってくれたけどボクの口には合わなかった。 だけど平凡に日々が過ぎていった。穏やかで安定した毎日。ただ一つ変わった事と言えばボクがハナさんを『ハナ』と呼ぶようになった事。犬の『華』なのかややこしいけどそれが普通になっていた。


ブーブーブーブー
ハナの携帯は毎日何度も鳴っていた。ハナは携帯の画面を見てはため息をつき、携帯に出る事は一切なかった。その相手が誰なのか簡単に想像がつく… どうかハナを連れて行かないで… 毎日心でそう願った。