それから何日も平凡な日々が流れた。 ボクは気分を変えていつもと違うルートでバイト先へ向かっていた。 風俗店が密集した通りを緊張しながら歩く。いつもは絶対に通る事がない道‥ キラキラした看板や、裸に近い女の子の大きなパネルが並び視線のやり場を困らせた。
目の前を横切る女の人とぶつかりそうになってボクは慌てて避ける。 ふわっと甘い香りがする。 「ハナさん?!」 ボクは相手の顔も見ず反射的に名前を呼んでいた。
ハッと我に返り言い訳をしようとあたふたしたが何も思い付かなかった。 「!! ハナを指名してくれんのぉ~?嬉しいぃ! 今来たトコだから店の中で待ってて☆すぐ用意するから~」 腕を掴まれグイグイと店内へ引っ張られる。 「ちょ、ちょっと、ボクはあのぉ~…」そんなしどろもどろしてる間に待合室に座らされた。 「待っててね!!」 そう言って笑顔を見せるその人は間違いなくあの日のハナさんだった。