タバコを吸いながらトボトボと歩く。空はうっすら明るくなっている。 甘い香りがほのかに漂ってきてボクは足を止めた。 ―さくらの木― やっとここまで帰ってこれたか‥このさくらの木からアパートまではすぐ近く‥ さくらの花はずいぶん散り、ただの木になりかけていた。 しばらく眺め甦る記憶… ハナさん、アナタは今どこで何をしていますか… 暗闇でほとんど顔も見えなかったのにナゼか思い出してしまう。ナゼか心に強く残っているハナさん。 もう逢えないのかな・・ ふんわりと春風が吹いて木の葉がざわざわと揺れる。ボクの心もざわざわと揺れている気がした。